脳を鍛える生活習慣

フィジカル

どんどんバカになる日本人

20年間教育現場で勤務していると、
日本人の能力の推移というものが
ある程度ハッキリと見えてきます。

もちろん、地域性や学校・学年の特色
というものもありますが、
おしなべて思考力・読解力が落ちてきている
ように思います。

思いつきでしかしゃべれない生徒。

思考を要する問題からすぐに逃げようとする生徒。

そのような生徒の割合が上がってきているように
感じるのは私だけでしょうか。

そして、そのような生徒の割合が増え始めたのが、
スマホが国民に普及し始めたのと時期を同じくしている
ように感じます。

私が初めてスマホを手にしたのが、
今からちょうど10年以上前のことです。

購入する前に、書籍等で機能や使い方についてじっくり調べ、
物珍しさにあれこれと試してみたのを
今でもハッキリと覚えています。

その時感じたのは、
「大人の自分ですらこれほど夢中になって
スマホを触ってしまうのだ。」
ということです。

まして、好奇心旺盛な子供達にこうしたおもちゃを
与えてしまったら、勉強そっちのけで没頭してしまうのも
やむを得ないことかもしれません。

今からおよそ10年前、
スマホは高校入学のお祝いの品でした。

中学生でスマホを保有している生徒はまれで、
ほとんどの生徒は親のスマホを触らせてもらう程度でした。

それから5年経ち、中学生のほとんどが
自前のスマホを保有するようになり、
小学生にスマホを買い与える親までいると聞きます。

SNS関連のトラブルが頻発し始めたのは、
その頃からです。

自分の推しのYouTuberを見つけては、
延々と動画を視聴し続けていると言います。

これでバカにならないとしたら、
それこそ奇跡です。

断言しますが、
これは子供の責任ではありません。

スマホを買い与えることが愛情だと
履き違えてしまった、親の責任です。

高いスマホ代と、月々の通信量を払いながら、
親子でどんどんバカになる。

この世にこれ以上の悲劇があるでしょうか。

本を読まない民族の末路

最近の調査では、本を月に1冊も読まない人の
割合が6割を超えたそうです。

本を読む人にとっては、本を読まない人がいること自体が
信じられないと思うのですが、
そうした人々が国民の約半分を占めているのです。

本を読まなくなった一因として、
本を読むよりも面白く手軽に味わえるコンテンツが
増えたことが挙げられます。

確かに、本を読んで内容を理解していくのは、
脳にかなりの負荷がかかります。

一方、YouTubeやTikTokから発信されるコンテンツは、
脳に負担がかからずボーッとしていても楽しめます。

このことについて、
「月に1冊でもいいから本を読むべきだ」と
警鐘を鳴らす人たちがいます。

しかし、ことの本質は私たちが
「本を読まない」ことにあるのではありません。

私たち日本人の多くが「本を読めない」
ことに問題があるのです。

公立学校で指導をしていると、
学級の約半数は教科書に書いてあることを正しく読み取って
理解することができないことがわかります。

まさに、国民の約半数が「活字離れ」している状況と
みごとに符牒があうのです。

いたずらに「本を読め」と連呼するだけでは、
焼け石に水でなんら本質的な解決にはなっていないのです。

「どうせ国を動かすのは一部のエリートなんだから、
国民の大半がバカでもなんとかなるのでは」

国民の大半がバカになることで、
喜ぶのはその一部のエリート層です。

勉強しないバカな国民は、
国や自治体から搾取され続けます。

それは、これまでの歴史の中でも
延々と繰り返されてきたことです。

「別に自分は搾取されても構わない」という人は、
これからも本を読む必要はありません。

しかし、「搾取されてたまるか」と考える人は、
スマホを放り投げて活字に向き合うことから始めるべきです。

ラジオは脳にきく

先日、本棚に眠っていた「ラジオは脳にきく」
という本を読みました。

今から20年ほど前の本ですが、
その内容はまったく古さを感じさせません。

医師である筆者は次のように主張します。

「便利すぎる生活が、現代人から『想像』する機会を失わせ、
脳機能低下、うつ病、認知症(ボケ)などをもたらす。
そればかりか、『人間らしさ』をつかさどる
前頭前野の機能低下が、無気力人間や凶悪犯罪の増加を招く。」

まさに、スマホに踊らせている現代日本を予知しているかのようです。

本書では、いくつかの脳を鍛える生活習慣が紹介されているのですが、
タイトルにあるように特にラジオの有効性について述べられています。

「なぜラジオが脳にとっていいのか。それは映像による情報がなく、
音声情報しか脳に届かないため、脳は得られない情報を補おうとして
働くからだ。」

特に、ラジオを聴きながら家事や雑用をこなしたりして、
「同時に二つのことをする」のが脳にとってはいい鍛錬になるそうです。

アルツハイマーの初期の患者さんは「同時に二つのことを行う」
ことができなくなるそうで、日常的にラジオを聴きながら何かをするのは
認知症予防にもつながるのではないかということです。

筆者は、ラジオのニュース番組を集中して聴いた後ラジオを消し、
内容を思い出して箇条書きにすることが脳の鍛錬になると主張します。

これはオーディオブック等でも応用可能です。

オーディオブックを集中して聴いて内容を理解し、
その内容について周囲の人々と語り合うのは、
楽しみながら脳を鍛える方法であると言えるでしょう。

運動習慣が脳を守る

本書には、「体を動かすことで脳も鍛えられる」という
1項が設けられ、運動の有効性が述べられています。

このことは現代の私たちにとっては、
ある意味常識となりつつあるかもしれませんが、
20年前にこのことを主張していたのは達見であったと思います。

ラジオでもYouTubeでもオーディオブックでも構いませんが、
近所を散歩しながら耳で聴くのはいい脳の鍛錬になります。

じっと座って聴くよりも、運動によって脳の働きが活性化されるからか、
理解力や記憶力が高まるように思います。

最後に、私たちは一体なんのために脳を鍛えるのでしょうか。

「いい学校に行くため」

「仕事で活躍するため」

「ボケないため」

それらも悪くありませんが、私が一番に掲げるのは
「人間らしさ」を守るためです。

人間味ある所作、会話、コミュニケーション、
それらすべてを司っているのは脳です。

もしもバカになってしまったら、軽妙で知的な会話を楽しんだり、
素敵な映画を見たり小説を読んだりして涙を流すことなど不可能です。

そうした人間らしい楽しみを生涯に渡り享受するために、
私たちは脳を鍛えないといけないのです。

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